型式番号の構成
ASKフランジ無 ボールブッシュ
ASKフランジ付 ボールブッシュ
ASK-Bosch ボールブッシュ
ASK-Boschボールブッシュの構造と特長
スーパーボールブッシュSB型(自動調心形)
スーパーボールブッシュの構造は、標準型(N・L)とは根本的に異なります。鋼製外筒の代わりとして円筒状のプラスチック外筒にベアリングプレートを挿入している事が最も大きな特長です。このベアリングプレートの外表面の緩やかな円弧によって、ベアリングプレート自体が、軸に沿って自動調心致します。またボールとベアリングプレートはR接触から長寿命と高負荷が得られます。
スーパーボールブッシュSB-OP型(自動調心・開放型)
スーパーボールブッシュ開放型における負荷の方向と定格荷重への影響
カタログ上の定格荷重の数値は、下図における0°、係数1.0の場合のものです。負荷のかかる方向が違う場合の定格荷重は下図の係数fp又はfpoを定格荷重に乗じて下さい。
グルーブドテーパーピンによって回り止めをする方法
スーパーボールブッシュ開放型は、出荷時に回り止め用の穴が加工されています。
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内径φ12~φ40迄
回り止メ用のハウジングの穴:φ3H11 -
内径φ50
回り止メピン用のハウジングの穴:φ5H11
CB・CB-SUS型(コンパクト型)
CB型ボールブッシュは、ベアリングプレート、リテーナー、止メ輪を合理的に組合せたボールブッシュです。大きな特徴として、外径寸法をコンパクトにしたボールブッシュです。また、ボールとベアリングプレートはR接触から高負荷が得られます。 CBボールブッシュの固定方式は圧入方式を採用しており、コンパクトな設計が可能となります。また、ハウジング内径寸法公差によりCBボールブッシュ内径が設定されますのでCBカタログ詳細からハウジング公差の参照を願います。
DB・DB-SUS型(セグメンタル型)
DB型ボールブッシュは、ベアリングプレート、リテーナーにより構成されています。
DB型ボールブッシュの特徴は全長をコンパクト化した事です。
使用条件について
ASKボールブッシュ
ガイド軸・硬度
ASKボールブッシュ内周面は、ボールブッシュ定格荷重での走行寿命を保つため、硬度が58HRC以上となっております。従って、ガイド軸表面温度が58HRC以下の場合は、ボールブッシュの定格荷重が低下する要因となります。特にガイド軸の表面硬度は、ボールブッシュの寿命に大きく影響しますので、材質・熱処理方法について十分吟味してください。
使用温度
ボールブッシュ使用温度が100℃以上になりますと、許容接触応力が著しく減少するため、定格荷重が低下いたします。シール付の場合、80℃以下で使用して下さい。
振動・衝撃
ボールブッシュの走行中に外部から振動・衝撃等を受けますと、実際にボールブッシュに掛かる荷重が計算値より大きくなる事が多く、寿命に大きな影響を与えます。
ASK-Boschボールブッシュ
許容温度
ASK-Boschボールブッシュ許容温度は、シール無しの場合100℃まで、シール付の場合は80℃までの範囲となっております。この許容温度を超えますと、シール材質が樹脂性のためシール形状が形状変化をし、シール効果の低下となります。
許容速度及び加速度
ASK-Boschボールブッシュの最大速度は3m/s、加速度は150m/sまでは許容範囲となります。なお、この許容速度範囲を超えますと、ボールブッシュの持つ機能である専用軸との転がり接触機能ができず専用軸とボールブッシュが滑り接触となり、ボールブッシュの寿命に大きな影響を与えます。
ハメアイ
ASKボールブッシュをガイド軸と組み合わせて使用する場合、そのスキマ調整には注意が必要です。高精度を必要とする場合や、スムーズな走行を得るためには、ガイド軸及び軸受箱のスキマは使用に応じて最適の値が必要となります。要求精度、用途によって異なりますので、ASKボールブッシュの許容最大予圧量について、下記をご参照下さい。
摩擦
ころがり摩擦
ボールブッシュはその構造上、軸に対して無限軌道のころがり接触運動を行いますので、摩擦の少ないことが大きな特長の1つになっております。特に始動摩擦はすべり軸受とは比較にならぬほど小さく、小さな動力で機械を始動することが可能であります。一般に、機械の摩擦損失が少ないことは、小さな動力によって機械を作動することができ、機械の運転コスト、製作コストを低減することができます。また運転中の発熱量も少ないため焼付などを防止することができます。
ボールブッシュの摩擦に影響する要因
ボールブッシュの摩擦に影響する要因としては、運転速度・荷重・潤滑剤の種類と量、軸表面のアラサなどが挙げられます。ボールブッシュの摩擦係数に及ぼす運転速度の影響は、右図に1例を示しますように、一般にはごく僅かでほとんど変化がありません。
また、潤滑剤の種類や量も摩擦に影響を及ぼし、特に粘度の高い油を多量に給油しますと、粘性抵抗も相当増大しますから、ボールブッシュのご使用に当たっては、使用条件に応じて適当な油を供給するようにして下さい。ボールブッシュのころがり摩擦抵抗は次式によって求められます。
F = μW + f'
F:ころがり摩擦係数(kg) μ:ころがり摩擦係数
W:負荷重量(kgf) f':シール抵抗(kg)
取付け
ASKボールブッシュ群は、取付け方法が豊富です。選定されたボールブッシュに適用する取付け方法について、下記をご参照下さい。
ストップリングによる取付け
別シールによる取付け
ASK-Boschボールブッシュは専用の別シールにより、ハウジング内にボールブッシュを固定できます。
適用ボールブッシュと別シールの組み合わせ
SB・・・・・・・・SBX
SB-OP・・・・・SBX-OP
CB・・・・・・・・CBX
DB・・・・・・・・DBX
コンパクト形の取付け
寸法表にある軸とハウジングの公差であれば、スナップリングは必要なく、ハウジング内に圧入固定できます。ただし、ハウジングの全長はコンパクトボールブッシュの全長以上が必要です.
スキマ調整取付け
ASK-Boschボールブッシュは、内径調整可能なハウジングに取り付けることにより、容易に軸とのスキマ調整が可能です。
開放形の取付け
開放形(SB-OP形)も図に示すように、スキマ調整可能なハウジングにより、スキマ調整ができます。また、外筒にはまわり止め及び前後方向の固定用のピン穴が施されています。
防塵
シール付ボールブッシュ
ボールブッシュの性能を十分に発揮させるためには、外部からの塵埃や水、薬品の浸入を防ぐようにする必要があります。シール付きボールブッシュは、標準品の場合は特殊ゴム製、ASK-Boschボールブッシュの場合は、ポリウレタン製のシールを両側又は片側に装着したもので、シールはシャフトと接触することにより、塵埃の払拭を行い、また潤滑剤の保持を行います。シールは直線運動に適した材質及び形状になっていますので、確実なシール効果が得られます。
専用別シール
ASK-Boschボールブッシュには、専用の別シールが用意されています。別シールはポリウレタン製のシールを納めた金属部の外径が適合ボールブッシュの外径より幾分大きくなっていますので、圧入取付により、ボールブッシュをハウジング内に固定することができます。
潤滑
ボールブッシュの仕様に際しましては適切な潤滑により焼き付き、磨耗、温度上昇を防止し、円滑な運転が得られ、しいては所定寿命まで安定した効果が約束されます。無潤滑の場合、ゴムシールの使用は適しておりません。
潤滑方法
ボールブッシュの潤滑は、すべり軸受に比べて潤滑方法の簡便な事も特徴であり、グリース潤滑と潤滑油があります。
グリース潤滑においてはボールブッシュ内部に所定グリースを手塗りする方法がとられます。ハウジングにグリースニップルを取り付けた、潤滑廻り設計に依り簡単にグリースの交換管理が行えます。グリース潤滑においてはグリースに異物の混入が無い様、取り扱い時には注意が必要です。
潤滑油においてはシャフトへの滴下給油方式で行います。小径ボールブッシュにおいては適切な潤滑油がより一層の直線運動性能を発揮されますので潤滑油をお奨めします。
潤滑剤の選定
ボールブッシュの運転される速度、荷重、温度が潤滑剤の選定要素となります。一般的な選定は下記の表に依り行って下さい。
運転速度の速い、また、運転荷重の大きい場合には低粘度油、ちょう度番号の小さいグリースを採用します。グリースを集中給油方式で給油する場合は給油作業における流動性のよいものを選ぶ必要があります。
潤滑剤量
グリースの充填では、軸を挿入した空間の1/2程度になるようにします。
グリースの充填により運転音の低下も計られますが、小径ボールブッシュにおいてはボール循環の妨げとなりますので過剰な充填は避けて下さい。
ボールブッシュに使用される潤滑剤
潤滑剤 | オイル・グリース種類 | 各社銘柄 |
潤滑油 |
タービン油 :ISOVG32~68 |
ユニウェイ(新日本石油) 上記:相当品 |
グリース |
リチウム系グリース
:混和ちょう度= |
マルティノックグリース(新日本石油) 上記:相当品 |
フェルトリング
ゴムシール、ポリウレタンの使用できない有毒ガス雰囲気では、フェルトシールが適用できます。フェルトシールは、金属製リングにて保護され、ハウジングに簡単に組込むことができます。
その他の方法
運動系全体を密封することによって、より完全な防塵効果が得られます。この方法としてはジャバラ・ベロー式・又はテレスコープ式のものがあります。
定格荷重と寿命及び係数
寿命計算式
ボールブッシュの寿命計算式
ボールブッシュの走行寿命は、基本動定格荷重と負荷荷重から求められますが、専用軸の硬さや、使用温度、ボールブッシュ鋼球列の配置などの諸条件によって左右されます。
また、ボールブッシュにかかる荷重は複雑で、運動中の振動や衝撃も寿命に影響してきます。これら、寿命に影響を与える諸条件を考慮しますと、寿命計算式は次のようになります。
寿命時間の算出
ボールブッシュの寿命時間は、単位時間当たりの走行距離を求めることにより算出されます。ストローク長さに対し時間当たりの往復回数が一定の場合には、次式により走行寿命から寿命時間の算出ができます。
基本定格荷重と寿命
ボールブッシュの寿命
ボールブッシュは荷重をうけながらころがり運動しますので、軌道面、鋼球には常に繰り返し応力が作用します。このために、ある走行距離に達すると、転送面は疲れクラックの進行から、表面の一部にうろこ状に“はくり”が生じます。これをフレーキングとよびます。ボールブッシュの寿命とは、軌道面あるいは鋼球のいずれかに最初のフレーキングが発生するまでの総走行距離をいいます。
定格寿命
ボールブッシュの定格寿命とは、一群の同タイプのボールブッシュを同じ条件で個々に往復運動をさせたとき、そのうちの90%がフレーキングをおこすことなく到達できる総走行距離(L=50km)をいいます。
基本動定格荷重 C
基本動定格荷重とは、定格寿命を満足させ得る方向と大きさが変動しない荷重のことをいい、その値はカタログ寸法表中に記載してあります。
基本静定格荷重 Co
基本静定格荷重とは、ボールブッシュが、静止あるいは運動している状態で、過大な荷重や過大な衝撃荷重をうけた場合、軌道面と鋼球の接触部において永久変形が生じますが、この軌道面と鋼球との永久変形の和を、鋼球直径1/10000 mmにとどめ、以後の運転に支障を来たさない様に定めた静止荷重をいいます。
寿命に影響を与える係数
硬度係数 fH
ボールブッシュの基本動定格荷重Cはシャフトの表面硬度が58HRC以上である事を基準としていますので、軸硬度がこれ以下の場合は、寿命は短くなり許容荷重も減少しますので、右図に示す硬度係数fHを乗じて下さい。
温度係数 ft
ボールブッシュの温度が100℃をこえると鋼球転動面の硬度が下がり、常温で使用する場合よりも寿命は低下し、許容荷重も減少しますので右下図に示す温度係数ftに乗じて下さい。また、合成樹脂リテーナータイプは、80℃以下での使用として下さい。
衝撃係数 fd
ボールブッシュが、静止及び運動している状態で、機械装置の衝撃、振動により局部的な永久変形が生じ、低寿命の原因になりますので、下表に示す衝撃係数fdを乗じてください。
荷重係数 fs
ボールブッシュの基本動定格荷重は、1列の鋼球列に均一に荷重がかかる事を前提にしてありますので、作用荷重がモーメント荷重あるいは極端な軸のタワミなどにより鋼球列に対し、部分的に荷重の集中が見込まれる場合には上表に示す荷重係数fsを乗じてください。
鋼球列の配置による係数 fQ
ボールブッシュの定格荷重は荷重方向に対する鋼球列の位置により変わります。荷重の真下に1列の鋼球列がある場合と2列の鋼球列がある場合とでは、許容荷重が異なり、荷重の真下に2列の鋼球列がある場合の方が大きな荷重を受ける事ができます(この場合、ラジアルスキマをゼロとして考えます)。したがって、鋼球列の配置により表の係数fQを乗じて下さい。
荷重計算例
ボールブッシュに作用する荷重の計算例
機械装置に組込まれたボールブッシュに作用する荷重は、物体の重心位置、推力位置、及び起動停止時の加速、減速の速度変化などにより変化します。
ボールブッシュの選定に当たってはこれらの条件を十分に考慮して、作用荷重を求める必要があります。
W:負荷荷重 Vn: 速度 ( mm / sec )
F:推力 g: 重力加速度 ( 9.8 × 10 mm / sec )
n:距離 Pn: 作用荷重 ( ラジアル・逆ラジアル方向 )
R:外力 PnT: 作用荷重 ( 水平方向 )
Pm: 平均荷重
平均荷重計算例
ボールブッシュにかかる荷重が走行中にいろいろな条件によって変動する場合、その変動する荷重条件における寿命と等しい寿命となるような平均荷重を求めて寿命計算します。
一般的な変動荷重に対する平均荷重の計算例を下表に示します。
変動荷重に対する平均荷重の計算
ワーク上下方向搬送のように、上昇時と下降時にテーブルにかかる荷重が変動する場合。
上図のように、上昇時にワークを下から持ち上げて上限でワークを取り去り、下降時はテーブル本体重量のみになる場合は、上昇時及び下降時の作用荷重を求める。
テーブル上昇時
テーブル下降時
また、変動荷重は上昇時と下降時に下図のように段階的に変化するので、平均荷重Pmは
となります。